【概要】
12月25日に富士山御殿場側斜面の現地調査を実施した.
標高2000m~1900mにかけて新鮮かつ明瞭なスラッシュ雪崩の堆積物を確認した.
このスラッシュ雪崩堆積物は12月22日未明に発生したものである.
【背景】
12月21日~22日にかけて,季節はずれの温暖な天気で富士山山頂で22日未明に-5.1度を記録.また,南東斜面ではまとまった降雨で,国交省印野観測点で22日1時~4時にかけて28mm.
一方,21日以前には,標高1300m付近まで積雪があることがWeb上の写真から確認された.
例えば↓
一方,21日以前には,標高1300m付近まで積雪があることがWeb上の写真から確認された.
例えば↓
http://www.fujigoko.tv/live/constnInfo.cgi?Code=1229777232
http://www.fujigoko.tv/live/constnInfo.cgi?Code=1229997228
http://www.fujigoko.tv/live/constnInfo.cgi?Code=1229997228
スラッシュ雪崩の発生については気象条件に規則性がある.
たとえば,富士山頂で-5度以上,御殿場で+12度以上,短時間に数十mmの降雨,といった閾値 を越すとスラッシュ雪崩が発生しているようである(小森,スラッシュ雪崩フォーラム報告書 by 防災科技研.この値は再考の余地がある).これまでは人的・物的被害が出るような比較的規模が大きな事例だけが記録されているが,更にスラッシュ雪崩が「発生したか」または「発生していないか」といった微妙な時の事例とその時の気象値が増えれば,信頼できるスラッシュ雪崩発生予報の構築につながると考えられる.
【調査結果】
26日に現地調査を実施した(写真1).調査メンバー:小森次郎(だけ.さみしい~)
御殿場口登山道に沿って登る.登山道沿いN35.202437, E138.463246, 標高1810.5mまで達する新鮮な雪代の堆積地形を確認.形が崩れていない自然堤防をもつことから形成から間もないと判断される.内部には氷が少ないが,周辺の表層の凍結スコリアよりも頑強に凍り固まっていることから,おそらく泥流状の細い流れであったと考えられる.2007年12月29日のスラッシュ雪崩イベントで発生から半日にほぼ同じ地点で見た氷混じりの泥流と同じであろう.この流れは上流では一部で斜面表層を薄く流れたらしく,堆積地形が一度途絶えている.
次郎坊小屋の下,標高2000m付近まで上がると急激に風が強まり,四つん這いになっても風下に体が流される.北側へトラバースする.この付近の斜面はスラッシュ雪崩が通過したようで,地表面が斜面上から下に延びる細い帯状に削られた状態.登山道より北側270mにあるガリー(N35.204669, E138.460929, EL2030m)では,谷頭から流れ込んだ雪崩のデブリが明瞭に残る(写真.2).
時々休息するように風がやむが,またすぐに風が吹く.アイゼンも付ける余裕が無く流されるままに北側のガリーの底に飛び込み一時避難.氷塊が飛び始め,斜面上には浮いた状態の礫が点在するで落石の危険性も大.落石を研究していて落石で怪我をするのも恥ずかしいので撤退開始.雪崩発生点と宝永火口内の様子もチェックする予定だったが諦める.
風に流されながらスラッシュの堆積物にそって斜面を下る.標高2000m地点(N35.204887, E138.461859)にて,典型的なスラッシュ雪崩堆積物が続くので風の合間をねらってカシャリ!(写真3).サンプリングはできず.さらに下り,堆積域の末端を標高1935m付近(N35.204665, E138.462158)で確認.この付近では氷・雪はかなり抜けた状態で流れた模様で(写真4),スコリアのマトリックスの氷は少ない(登山道の末端よりは多い).
発生地点を過去の事例を参考に標高2400m付近とすると,スラッシュ雪崩から氷を含んだ泥流状の流れの流下距離は1.2~1.5km程度と考えられる.なお,2007年春には獅子岩周辺や宝永山の斜面でもスラッシュ雪崩が発生したが,今回は何とも言えない(宝永山斜面はあやしい).他の斜面では,少なくともスバルラインは4合目まで上がれるそうで,その範囲ではスラッシュの発生は無い模様(アジア航測(株)の塩谷氏の情報).
【発生日時の推定】
◆天気(図1)
・12月でまとまった雨は9日(印野で日雨量28mm)と22日(同28mm).
・時間雨量で見ると22日2~4時の2時間で10mmと16mmとまとまった雨.9日は10時間の雨(21~22時の8mmが最多)でまとまって降っていない.
◆堆積物の層相 (写真3)
・スラッシュ雪崩堆積物の上に雪を載せていない.
・融解し氷が抜けたスコリアが表層に無い.
たとえば,富士山頂で-5度以上,御殿場で+12度以上,短時間に数十mmの降雨,といった閾値 を越すとスラッシュ雪崩が発生しているようである(小森,スラッシュ雪崩フォーラム報告書 by 防災科技研.この値は再考の余地がある).これまでは人的・物的被害が出るような比較的規模が大きな事例だけが記録されているが,更にスラッシュ雪崩が「発生したか」または「発生していないか」といった微妙な時の事例とその時の気象値が増えれば,信頼できるスラッシュ雪崩発生予報の構築につながると考えられる.
【調査結果】
26日に現地調査を実施した(写真1).調査メンバー:小森次郎(だけ.さみしい~)
御殿場口登山道に沿って登る.登山道沿いN35.202437, E138.463246, 標高1810.5mまで達する新鮮な雪代の堆積地形を確認.形が崩れていない自然堤防をもつことから形成から間もないと判断される.内部には氷が少ないが,周辺の表層の凍結スコリアよりも頑強に凍り固まっていることから,おそらく泥流状の細い流れであったと考えられる.2007年12月29日のスラッシュ雪崩イベントで発生から半日にほぼ同じ地点で見た氷混じりの泥流と同じであろう.この流れは上流では一部で斜面表層を薄く流れたらしく,堆積地形が一度途絶えている.
次郎坊小屋の下,標高2000m付近まで上がると急激に風が強まり,四つん這いになっても風下に体が流される.北側へトラバースする.この付近の斜面はスラッシュ雪崩が通過したようで,地表面が斜面上から下に延びる細い帯状に削られた状態.登山道より北側270mにあるガリー(N35.204669, E138.460929, EL2030m)では,谷頭から流れ込んだ雪崩のデブリが明瞭に残る(写真.2).
時々休息するように風がやむが,またすぐに風が吹く.アイゼンも付ける余裕が無く流されるままに北側のガリーの底に飛び込み一時避難.氷塊が飛び始め,斜面上には浮いた状態の礫が点在するで落石の危険性も大.落石を研究していて落石で怪我をするのも恥ずかしいので撤退開始.雪崩発生点と宝永火口内の様子もチェックする予定だったが諦める.
風に流されながらスラッシュの堆積物にそって斜面を下る.標高2000m地点(N35.204887, E138.461859)にて,典型的なスラッシュ雪崩堆積物が続くので風の合間をねらってカシャリ!(写真3).サンプリングはできず.さらに下り,堆積域の末端を標高1935m付近(N35.204665, E138.462158)で確認.この付近では氷・雪はかなり抜けた状態で流れた模様で(写真4),スコリアのマトリックスの氷は少ない(登山道の末端よりは多い).
発生地点を過去の事例を参考に標高2400m付近とすると,スラッシュ雪崩から氷を含んだ泥流状の流れの流下距離は1.2~1.5km程度と考えられる.なお,2007年春には獅子岩周辺や宝永山の斜面でもスラッシュ雪崩が発生したが,今回は何とも言えない(宝永山斜面はあやしい).他の斜面では,少なくともスバルラインは4合目まで上がれるそうで,その範囲ではスラッシュの発生は無い模様(アジア航測(株)の塩谷氏の情報).
【発生日時の推定】
◆天気(図1)
・12月でまとまった雨は9日(印野で日雨量28mm)と22日(同28mm).
・時間雨量で見ると22日2~4時の2時間で10mmと16mmとまとまった雨.9日は10時間の雨(21~22時の8mmが最多)でまとまって降っていない.
◆堆積物の層相 (写真3)
・スラッシュ雪崩堆積物の上に雪を載せていない.
・融解し氷が抜けたスコリアが表層に無い.